アメリカのダンサー・振付師の一人である"JaQuel Knight"が、自身が担当したビヨンセの"Single Ladies"の振り付けの著作権化をアメリカの著作権局にて認められたことをBillboardのインタビューで公にしました。(参考:Inside 'Single Ladies' Choreographer JaQuel Knight's Quest to Copyright His Dances)

現在31歳の彼は音楽業界で最も人気のある振付師の一人であり、ポップミュージック界のダンスを中心としたアイコニックなビジュアルを牽引している存在であり、これまでにビヨンセや、クリス・ブラウン、ブリトニー・スピアーズ、ティナーシェ、ブランディなど、数多くの世界的アーティストと共に作品を創り上げています。その中でもビヨンセとは18歳の時から仕事をしており、「Single Ladies」、「Formation」、「Diva」などの彼女の代表作と言えるMVから、ツアーでのパフォーマンスまでをバックアップしてきたことでも有名です。
そして、2016年に発表した作品「Formation」の振付師を務めた彼は、彼女の政治的な活動の幕開けをダンスで表現し、YouTubeでの再生回数は何億回にも上りました。しかし、同じ作品に関わったクリエーターが自分とは違った形で評価されていることに疑問を感じるようになったと言います。「マイク・ウィレル・マデ・イットは『フォーメーション』のプロデューサーとして何百万ドルも稼いでいる」と彼は推論し、自身のキャリアは業界トップの振付師としての評判は高まったが、報酬に関しては、いまだに派遣社員のような扱いを受けていると語りました。
通常、振付師はアーティストのチームに雇われ、日給や週給、またはプロジェクト単位で報酬を受け取ることが多く、単発での収入がほとんどです。しかし、近年のSNSなどのツールの進化によって、音楽は聴くだけではなく観るものとして視覚的アートは重要視され、振り付けはアーティストを象徴するアイデンティティの重要な一部となっています。
そして、ユーザー1人1人が拡散する力を持つ現代において作品は勝手にひとり歩きし、様々なところで観られるようになりました。
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"どうしてこんなことになっているのに何も得られないのか?"と彼は自問自答し、振付師・ダンサーがもっと正当な権利と報酬
を得られる世界を築くために、振付の著作権化に踏み切りました。
「残りの人生を踊ることだけに費やすのではなく、この考えをみんなと共有し、自分の子ども達がダンスで生活できるようになるためのものを創っていきたい」と語り、共に作品を創ってきた仲間たちもライセンスを取得できるように支援し、こうした著作権のある作品を著作者に代わってライセンスする米国のASCAPやSESACのような権利管理組織である収集協会の設立を検討する可能性も示しています。
まだこの取り組みは始まったばかりですが、すでに多くのダンサーが活動に賛同の意を示しており、彼の仲間たちは登録を申し出ているようです。
ダンサー・振付師が経済的にも社会的にもこれまで以上に誇れる仕事となり、世界中のダンスコミュニティが更に大きな力を持っていくことは、言葉のいらないダンスで世界が一つとなれるきっかけとなるかもしれません。
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